PATH AI

PATH-AI Residency Programme

この度、アラン・チューリング研究所(英)、エディンバラ大学(英)および日本の理化学研究所の共同研究「PATH-AI」の枠組みで、Somerset House Studios (サマセット・ハウス・スタジオ、英)とUAL Creative Computing Institute(ロンドン芸術大学クリエイティブ・コンピューティング研究所、英)が「PATH-AI研修プログラム」を立ち上げました。

このプログラムは、人工知能(AI)やその他のデータ駆動技術に関し、「プライバシー、主体性、信頼」をテーマに、異文化間の考えに批判的に関わる作品をアーティストに委託します。AIの倫理、ガバナンス、規制に関する国際的な展望を探求することに関心のあるアーティストを対象とします。選ばれた3名のアーティストは、6ヶ月間リモートで作品制作のサポートを受け、サマセット・ハウスが2022年に最終作品をオンライン公開します。

この研修プログラムは、全て英語で行われます。

【応募締め切り:2022年2月01日(火)02:00(日本時間)】

【背景】

AIは、膨大な可能性を秘めた強力なツールとして、新たな革命的な世代を可能にすると言われています。一方で、AIが個人、対人、社会の各レベルで引き起こす害悪の可能性も多岐にわたります。生体情報を用いた監視、個人情報の収集、不透明なアルゴリズムによる意思決定は、個人に力を与えず、人間性を奪い、操作されていると感じさせる可能性があります。また、データに基づく予測モデルの広範な使用は、歴史的な差別・不公平のパターンを再現する恐れがあります。

昨今、世界中の政府は、これらの技術をどのように管理すれば、公共の利益のために開発と使用を促進し、潜在的な害を抑制することができるかに取り組んでいます。しかし、国際的な倫理規定やガバナンスの枠組みを模索する中で、誰の価値観が反映され、誰が議論から取り残されているのでしょうか。もし、AIの倫理とガバナンスが、英欧やアメリカに支配された視点から脱却し、代わりに非西洋の知恵や、他の国々のアイデアや価値に対する代替的なアプローチを取り入れたとしたら、どのようなものになるでしょうか?

「PATH-AI(Privacy, Agency and Trust in Human-AI Ecosystems)」は、アラン・チューリング研究所(英)、エディンバラ大学(英)、そして日本の理化学研究所が共同で実施する学際研究プロジェクトです。プロジェクトの目的は、AIやその他のデータ駆動型技術に関連して、「プライバシー、主体性、信頼」という相互に関連する3つの価値が、英国と日本という全く異なる文化的背景の中で、どのように機能するかを検証することです。以上を踏まえ、今回の研修プログラムでは、異文化間の理解が、国際的な展望にどのように役立つかを探ることを目的とし、PATH-AIの中間報告書 にまとめられた新しい研究を基に、アーティストが報告書のテーマや調査結果に取り組むことを支援します。理論的・文化的背景から、さらにCOVID-19パンデミックの際の日常的な生活体験を通して、「プライバシー、主体性、信頼」という価値観がどのように表現され、実行されているかを含みます。

このプロジェクトは、UK Research and Innovation(英国研究開発機構)と日本の国立研究開発法人科学技術振興機構から資金提供を受けています。

【募集要項 】

異なる文化的背景を持つ人間とAIの生態系において、「プライバシー、主体性、信頼」といった相互に関連する価値観を探求することに興味のあるアーティストを、世界中のあらゆる地域、あらゆる分野から募集いたします。PATH-AI中間報告書の内容を出発点として、既存の作品の中でこれらのテーマと関わりがあるアーティストを対象とします。アーティストは、サマセット・ハウス・スタジオのコミュニティに参加し、6ヶ月間のリモートでの研修を通して、作品制作をサポートされ、サマセット・ハウスのプログラムの中でオンライン公開されます。作品が主にオンラインで公開されることを想定していない場合は、そのプロセスと成果を記録し、プロジェクトの成果としてその映像を共有します。

この研修プログラムには以下が含まれます。

  • 報酬:5000ポンド
  • 制作費:5000ポンド
  • サマセット・ハウス・スタジオからのキュレーターおよび作品制作サポート
  • UALクリエイティブ・コンピューティング研究所によるオンライン技術および助言サポート(自然言語処理、画像生成・処理、サウンド、ゲームデザイン、インタラクションなど)
  • アラン・チューリング研究所(英)の研究者との定期的なアドバイザリーミーティング:イギリスと日本のAIやデータ駆動技術に関連する「プライバシー、主体性、信頼」といった異文化間の概念に関する人文・社会科学の専門知識の提供
  • サマセット・ハウス・スタジオが仲介する専属のメンター(指導者)
  • アーティストの期待される成果:オンライン作品+サマセット・ハウスで展示されるスクリーンベースの要素
  • 研修期間中、サマセット・ハウス・スタジオのアーティストのために用意されたアーティスト開発プログラムや機会へのアクセス

【参加資格 】

年齢、分野を問わず、アーティストとしての活動歴が5年以上の方が対象です。世界各国からの応募を歓迎します。特に、非西洋的な視点をもたらしてくれる方を歓迎します。また、クリエイティブ産業に携わる方で、特にUnder-represented※と呼ばれる方の応募を歓迎します。

また、クリエイティブ・コンピューティング研究所とアラン・チューリング研究所による専門知識や技術的サポートに加えて、メンターシップも提供されますが、アーティストはすでにこれらのテーマの一部に取り組んでいることが期待されます。対象となるのは、新規プロジェクトと、開発中でまだ完成していないプロジェクトの両方ですが、研修終了時までに完成したプロジェクトを提供する必要があります。候補者は、プロジェクトの提案力、実現能力、および研修が自身の活動に有益であることを示すことを基準に選考されます。

研修は約6週間のフルタイムで行われますが、研修期間中に他のプロジェクトや作業を行うことも可能です。そのため、研修の構成は柔軟で、アーティストのニーズに合わせて設定されます。

研修は全て英語で行われるため、参加者は日常会話が出来るレベルの英語が求められます。

【スケジュール】

12月2日:アーティスト募集開始
2月1日(02:00日本時間):応募作品の締め切り
2月中旬:選考会および最終候補者との面接(オンライン)
3月〜8月: 6ヶ月間の滞在と開発
9月〜11月:最終作品の発表

【応募方法 】- フォーム  / ビデオ応募可(全て英語で記入すること)

【選考委員会】

デビッドレスリー、アランチューリング研究所
Leonara Manyangadze、プログラムプロデューサー、サマセットハウススタジオ
マリー・マックパートリン、サマセットハウススタジオディレクター
AI共同キュレーター、内田マホロ:人間以上のもの
シャーロットウェッブ、クリエイティブコンピューティングインスティテュート/ UAL上級講師
ジェームズライト、アランチューリング研究所
Gary Zhexi Zhang、サマセットハウススタジオのアーティスト

注*Under-representedとは、クリエイティブ産業関係者で、特に以下の点に当てはまる方を意味します。

  • LGBTQIA+および/またはノンバイナリーの方
  • 移民や難民の経験がある方
  • アフリカン・ディアスポラ出身者、南アジア、東アジア、東南アジアのディアスポラ出身者、および/または民族的に多様な地域の出身者
  • ニューロ・ダイバーシティの当事者
  • 身体障害者
  • 健康状態や障害をお持ちの方
  • ホームレスの方
  • 介護離職者/介護者
  • 失業者、または生活保護者
  • 労働者階級および/または近親者で初めて大学に進学した方